【陸上】桐生祥秀、5年ぶりの優勝で歓喜の涙「30歳でも日本で勝負できる」/日本選手権

桐生祥秀(29=日本生命)が男子100メートル決勝で5年ぶり3度目の優勝を果たし、初めてのうれし涙を流しました。決勝は追い風0.4メートルの下、10秒23でフィニッシュしました。このタイムは特別早いものではありませんでしたが、激しい接戦を制し勝利しました。中学から陸上を始めて以来、多くの悔し涙を経験してきましたが、今回は初めての歓喜の涙となりました。男子110メートル障害では泉谷駿介(25)が優勝し、野本周成(29)の2人が世界選手権代表に内定しました。
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5年ぶりの勝利インタビューで、桐生は「すみません」と手で口元を覆いながら、号泣しました。悔し涙の経験があるため、反射的にテレビカメラから顔を隠そうとしましたが、この夜の涙は隠す必要も恥じる必要もないものでした。
男子100メートル決勝では、号砲に対する反応速度が決勝参加者8人の中で最速の0.133秒でした。準決勝では狂っていた上体を起こすタイミングを修正し、経験豊富な選手たちが集まるレースで勝利しました。「最後の2メートルで横を見て、いけると思った」と述べ、フィニッシュ後は左の人差し指を突き上げて歓声を上げました。
「泣くつもりはありませんでしたが…。(後藤)トレーナーを見た瞬間に涙が出ました。東京オリンピックでも悔し涙しか流しませんでしたが、中学時代から初めてのうれし涙です。」
桐生は、16年リオデジャネイロオリンピック選考の日本選手権では3位となり、「想定外の内定だった…」と号泣しました。東京オリンピックでは400メートルリレー決勝でバトンが失敗し敗退、走ることもできず涙しました。2013年4月に高3で10秒01を記録し、9秒台の期待を受けて、感情を素直に出すことは難しくなりましたが、29歳の今、初めて歓喜の涙を流しました。
世界選手権の切符はまだ手にしていませんが、ランキングを上げるか、参加標準記録の10秒00突破を目指しています。今年から厚底スパイクを使用するなど挑戦を続けています。「速いタイムではないが、勝利をつかめた。30歳でも日本で活躍できることを示したい。若い力に負けないように頑張る」。ジェット桐生はまだ健在です。【益田一弘】