陸上の日本選手権が4日、東京・国立競技場で開幕します。女子400メートルのフロレス・アリエ選手(21歳、日体大)は短距離の有望株です。5月の静岡国際では51秒71で優勝し、2008年に丹野麻美が樹立した日本記録を0秒04、さらに9月の世界選手権東京大会の開催国枠エントリー設定記録を0秒03上回りました。当時はペルー国籍だったため日本記録には認定されませんでしたが、6月に日本国籍を取得。今回の日本選手権で初出場ながら日本一に輝き、世界選手権への道を切り開きました。 ◇ ◇ ◇ フロレス選手が注目を浴びるきっかけとなったのは5月の静岡国際でした。日本記録を0秒04上回り、会場にはどよめきが起こりました。「競ったら52秒台が出ると思っていたけれど、まさかの51秒台。出したというよりも、出てしまった感じです」。自己ベストも1秒32更新。世界選手権の参加標準記録(50秒75)とは差がありますが、驚き喜んでいました。日本とペルーにルーツを持つ父と、ペルーとイタリアにルーツを持つ母のもと、浜松市で生まれ育ちました。中学生から陸上競技を始め、東海大翔洋高2年時から400メートルを専門にすると、全国高校総体で6位入賞を果たしました。大学2年の昨年9月に学生日本一を決める日本学生対校選手権で初優勝。今シーズンは上半身の筋力アップに努め、ベンチプレスの重さは昨年より20キロ以上増の40キロを持ち上げられるようになったことで、「腕が大きく振れるようになり、足のストライドも広がった」と飛躍を遂げました。“フロレス流”の集中法も彼女の躍進を支えています。いつもレース前には「走りたくない」と気が進まないと感じることが多いそうですが、「トラックを一周したら帰れる」と自身に言い聞かせてスタートラインへ立ちます。サングラスを欠かさない理由は「レースに集中するため」です。すでに今秋の世界選手権の開催国枠エントリー設定記録は突破しており、日本選手権で優勝すれば代表入りが近づきます。注目度が高まる一方で、「それだけ多くの方に支えていただいていると思えば、それを競技につなげられる」と前向きに受け止めています。明るい性格も魅力の新星が、その名をとどろかせています。【藤塚大輔】◆陸上世界選手権の代表選考について 各種目の出場枠は最大3つ(女子やり投げは4つ)。日本人最上位のパリ五輪入賞者は、1月1日から日本選手権までに参加標準記録を突破すれば内定。8月24日までに標準記録を突破した上で日本選手権で3位以内に入れば、代表入りに大きく近づきます。開催国枠は、参加標準記録や世界ランキングなどの選考条件を満たした選手が1人もいない種目に適用されます。◆フロレス・アリエ選手について 2004年(平成16年)6月2日生まれ、浜松市出身。舞阪中で陸上を始め、東海大静岡翔洋高を経て2023年から日体大に進学。2024年日本学生対校選手権で200メートル、400メートルで2冠。400メートルの自己ベストは51秒71。家族は両親、姉、双子の兄の5人組です。