【ボクシング】中谷潤人が2団体王座統一、西田凌佑に6回TKO勝利 壮絶打ち合いの驚きの結末

WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(27=M・T)が、初の王座統一を果たしました。IBF世界同級王者の西田凌佑(28=六島)に対して6回終了TKOで圧勝。この全勝の日本人同士の頂上決戦を、3階級制覇王者の中谷が制しました。自身10度目の世界戦で、プロデビュー以来国内タイ記録となる31連勝を達成し、「バンタム級最強」を証明しました。今後はスーパーバンタム級への階級変更を予定しており、来春には4団体統一世界同級王者の井上尚弥(32=大橋)とのビッグマッチを目指します。
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試合は突然の結末を迎えました。7回開始直前に試合が終了し、勝利が決まった中谷は控えめに両腕を掲げました。そして、力なくイスに座る西田に声をかけられました。リング上には2つのチャンピオンベルトが運ばれました。左肩にはかつての勝ち取った記念すべきベルトが、右肩には新たな赤いベルト。これまで2つの階級で果たせなかった統一を遂に成し遂げた喜びを示しました。「日本人にとって親しみ深い階級で統一できたことが嬉しい。自信に繋がった」と中谷は語りました。
「ブラックホール」を「ビッグバン」が飲み込みました。守備力に長けた強敵にするりと驚きを与えたのです。「皆さんを驚かせたい」と語り、エンターテインメント性を重視したアプローチのもと、初回から攻撃を重ねました。相手の右目を腫らし、右肩を脱臼させるほどの破壊力を見せました。「これがチャンピオン同士の戦い。誇らしい結果だ」と中谷は胸を張りました。
10度目の世界戦でまた一つの節目を迎えました。2015年4月にプロデビューしてから31連勝を記録。この勢いで、元2階級制覇王者の亀田和毅(TMK)、元東洋太平洋、日本バンタム級王者のサーシャ・バクティン(協栄)と肩を並べました。そのうち24試合がKO勝ち。米老舗専門誌ザ・リングの最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で7位に昇りつめ、世界でもその存在感を一層高めています。
来春の日本のボクシング界を揺さぶるビッグマッチに向けて着々と前進中です。3月のボクシング年間表彰式で、1階級上の井上から「1年後の東京ドームで」との突然の提案を受け、握手でそれに応じました。準備は着々と進んでいます。西田戦に向けてのアメリカ合宿では1カ月間トレーニングを重ね、現地には栄養士も帯同しました。帰国後も減量計画を続け、身体改造をし通しています。
この日は無敗の状態を保ちながらスーパーバンタム級へ転向し続ける「怪物」を目指し、リング脇でその様子を見守っていました。2つのベルトを持ちながら「もうすぐ行くので待っていてください」と宣言しました。この実現のために、3階級王者中谷は次の舞台に立ち上がります。【飯岡大暉】
【ラウンドVTR】
1回 中谷は30戦全勝、西田は10戦全勝。サウスポー同士の全勝王者の対戦で、熱い王座統一戦が幕を開けました。最初から中谷が猛攻を仕掛け、得意の右アッパーを軸にして、力強い左フックを繰り出しました。西田はガードを固めて、カウンターの左ボディーフックを当てる熱戦が展開されました。ニッカン採点は中谷10-9
2回 西田はガードを高く保ちながら徐々に前に出て、相手のパンチをブロックし、左ボディーアッパーを軸に攻撃を仕掛けました。中谷は強烈な左フックを次々に放ち、接近戦で相手のガードを破るように右アッパーを繰り出しました。ニッカン採点は中谷10-9
3回 西田は左フックをカウンターでヒット、クリンチを引き出しました。前進しつつも、左ストレートを顔面にヒットさせました。中谷は力を入れたフックを放つが、精度が落ちるシーンも。両者はボディーを攻め合う展開になりました。ニッカン採点は西田10-9
4回 西田はコンパクトなストレートで中谷の顔面を的確に捉えました。接近戦でも細かいパンチを正確にヒット。中谷は強振のフックだけが目立ち、命中率の低さが課題でした。ニッカン採点は西田10-9
5回 中谷が左ストレートのクリーンヒットを軸に一気に攻める。西田のクリンチを振りほどき、偶然のバッティングで右目が腫れ上がり、終末にはドクターのチェックが入りました。ニッカン採点は中谷10-9
6回 中谷はゴングと共に攻勢をかけ、右フック、左ストレートを連発。西田の右目は大きく膨れ上がり、ほぼ目が閉じた状況に。試合はそのまま終わりました。ニッカン採点は中谷10-9
◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。幼少時から空手を学び、中学1年からボクシングを始めました。単身でアメリカへ渡り、ルディ・エルナンデス・トレーナーのもとで修行を積み、アマチュア14戦12勝2敗。同年4月にプロデビューし1回TKO勝ち。16年に全日本フライ級新人王、17年に日本同級ユース王座を獲得、19年には日本同級王座を取得しました。20年11月にはWBO世界フライ級王座、23年5月にはWBO世界スーパーフライ級王座、24年2月にはWBC世界バンタム級王座を確保。173cmの左ボクサーファイターです。