【解説】元白鵬の引退と退職劇の裏にある2つの主要な理由と協会の見解の相違

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歴代最多45回の優勝を誇る元横綱・白鵬(現宮城野親方、40歳)が日本相撲協会を退職することが正式に決定しました。

日本相撲協会は2日に臨時理事会を東京・両国国技館で開催し、宮城野親方が9日付で退職すると発表しました。宮城野親方の以前の部屋である旧宮城野部屋では、昨年度に元前頭・北青鵬による暴力事件が発覚し、これにより監督責任を問われて2階級降格の処分を受け、部屋は閉鎖。昨年4月に伊勢ケ浜部屋に移籍しました。部屋再興の兆しが見えず、さらに協会の公式発表とも食い違う形で退職が決まりました。

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旧宮城野部屋の閉鎖と伊勢ケ浜部屋への移籍以降、宮城野親方は心機一転しました。伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の助言に従い、日本全国で弟子の実家を訪れて謝罪し、部屋付きの楯山親方(元幕内誉富士)には敬語を使い、来客があれば自ら動いていました。

彼の姿勢を近くで見てきた間垣親方(元幕内石浦)は「尊敬の念が増しました。涙が出ることもありました」と話しています。この1年間の努力について尋ねられた宮城野親方は、「それが私の人間性なんです。でも、上層部には理解されない」と苦笑し、「痛みは本人にしか分からない。成長はしました」と述べました。

宮城野親方が退職に至ったのは、協会と本人の双方に原因があります。

宮城野部屋の閉鎖期間を明確にしなかったのは、協会幹部によれば「期間を決めると宮城野親方が反省しないから」とのことでした。しかし、1年ほど経った頃には、再興が認められるのではないかという期待が高まりました。伊勢ケ浜親方が7月初旬に定年を迎えるため、最終の本場所である5月の夏場所後が再興のタイミングと見られていたのです。

伊勢ケ浜一門は初場所後から、宮城野部屋の再興を理事会で議題に上げてほしいと頼んでいましたが、実質的な議論には至りませんでした。

宮城野親方が退職の意志を固めた理由として、<1>協会が再興時期を決めてくれないこと、<2>後輩の照ノ富士親方(元横綱)の指導下に入ることをプライドが許さないこと、の2点が挙げられます。3月27日の理事会でも議題に上がらず、彼の心は退職に傾きました。

協会の発表では、「今後は浅香山部屋で預かる」「解除を十一月場所後とすることを検討」とされていますが、宮城野親方は既に決心を変えませんでした。

この発表に関し、宮城野親方に近い関係者は「全く違う」と強調しました。ある元力士は「ハメられたのでは?怖い」と話しています。宮城野親方は9日に会見を開く予定ですが、協会の見解よりも次のステップに目を向けているようです。

協会が再興時期の提案をもっと早くできなかったのか。宮城野親方も、もう少し耐えることができなかったのか。この処分は、現役時代からの言動も大きく影響していると考えられます。

協会にとっても大きな損失です。有名で実績豊かな横綱と共存できないことへの損失感は否めません。チケットは売れ続けるかもしれませんが、この決定により大横綱を活かしきれなかった事実は、永遠に消えることはありません。【佐々木一郎】

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