武居由樹「1回KOで幸せ」完全復活証明「バンタム級の穴」SNSの書き込み目にし闘志に火

WBO世界バンタム級王者である武居由樹(28歳、大橋ジム所属)が127秒でのKO勝ちにより、2度目の防衛に成功しました。同級7位の挑戦者、ユッタポン・トンデイ(31歳、タイ出身)を相手に3度のダウンを奪い、1ラウンド2分7秒でTKO勝利を収めました。この試合は彼にとって初となる世界戦のメインイベントであり、世界戦での初KO勝ちとあって、特別な意味を持っていました。当初1月24日に予定されていた対戦カードでしたが、昨年12月に発症した右肩関節唇損傷が判明し、全治4週間と診断されたため試合は延期されました。この防衛戦で、完全復活を証明することができました。
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試合は野性味あふれる左の強打で始まりました。開始早々、武居が左フックを放ちユッタポンを倒しました。立ち上がる挑戦者に対し、再び左フックで2度目のダウンを奪いました。「ダメージを受けても倒すつもりだった」と粘る相手をロープに追い詰め、左ストレートでさらにダウンを追加しました。試合は最後に怒濤のラッシュでレフェリーによるストップを引き出しました。ムエタイの元王者で1000試合以上の経験を持ち、ボクシングでも過去にダウンしたことのない強靭な相手を見事に撃破しました。
「試合の雰囲気が厳しく、緊張感があったが、今日は絶対に倒さなきゃと思い、最初から全力を尽くした」と振り返ります。
日本のバンタム級王者が群雄割拠する中で、右肩の負傷により「少し出遅れた」と感じ、気持ちが落ち込むことも多かったようです。さらに、SNS上で「武居がバンタム級の穴」という書き込みを目にし、闘志に火がつきました。「1回KOで幸せ」と無事に初の世界戦でのKO勝利に安堵の表情を見せました。
右肩の手術は、大相撲の元横綱白鵬、元K-1三階級制覇王者・武尊、プロレスラー武藤敬司などの手術を担当した名医、杉本和隆氏に委ねられました。さらにPRP治療を利用し、患部に慎重に対処しながらリハビリを進めました。右拳が使えない期間には、左拳のテクニックを磨き、ユッタポンを圧倒しました。
次の防衛戦は今年9月に計画されており、WBOの指名試合となる見込みです。武居の対戦相手となるのは、WBC世界バンタム級1位那須川天心(26歳、帝拳ジム)のスパーリングパートナーを務めた、WBO同級1位クリスチャン・メディナ(25歳、メキシコ)です。また、リングサイドにはWBA休養王者の堤聖也(29歳、角海老宝石)の姿もありました。武居は「指名試合をクリアしたら誰とでも戦う。もう1本ぐらいベルトが欲しい」と意欲を見せました。絶好調で完全復活を示しました。【藤中栄二】
◆世界バンタム級戦線:WBA王者堤聖也(角海老宝石)は目の手術を受け、休養王者となっています。一方、暫定王者バルガス(米国)が正規王者に昇格し、年内に統一戦を予定しています。WBC王者中谷潤人(M・T)は6月8日に東京・有明コロシアムでIBF王者西田凌佑(六島)と王座統一戦に臨む予定です。また、WBC同級1位那須川天心(帝拳)は中谷-西田戦が行われる同じ興行でWBA同級6位サンティリャン(ドミニカ共和国)との世界前哨戦に備えています。