有限会社サンデーレーシングは、今年の日本ダービー(G1、芝2400メートル、6月1日=東京)に、皐月賞馬のミュージアムマイルを含む4頭を送り出す。その中には、皐月賞で2着になったクロワデュノール、10着のカラマティアノス、そして青葉賞で2着だったファイアンクランツが含まれる。
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香港で行われたクイーンエリザベス2世Cのレース中、左前肢を故障し競走を中止し、安楽死となった3冠牝馬リバティアイランドについて、同馬のオーナーである有限会社サンデーレーシングの吉田俊介代表(51)は心中の葛藤を明かした。
「競馬場でリバティのレース映像が流れることがありますが、正直なところ見ることができません。競馬は血統や馬の名前を通じて思い出を呼び起こすスポーツですが、リバティアイランドのことを思い出すことが、もう叶わないと思うと…。私はオーナーとして何らかの判断ができる立場にあったので、どこかで違う判断を下していれば、結果が変わったのではないかと後悔しています。これまでにも仕事の中で多くの悲しいことがありましたが、その中でも比較にならないほど重い喪失感です。どうにかできたのではないかと、自責の念が拭えませんし、多くの人を悲しませてしまったことがとても悔しいです。」
日本では安楽死の判断をする際に所有者や調教師に連絡が入るが、香港では“事後報告”となった。
「馬運車に乗せられてすぐの判断だったと聞きました。日本の手順と同じでもショックですが、納得するためのプロセスが全くなく、思った以上にあっという間に決まってしまいました。少しでも馬の苦しみを短くするため、国によって方法が異なることは理解していますが、気持ちに整理がつきませんでした。」
帰国数日後、リバティアイランドの遺灰が北海道の牧場に届けられ、中内田調教師や川田騎手が訪れました。
「香港では土葬が主流ですが、こちらから火葬をお願いし、遺灰とたてがみを持ち帰ってくれました。中内田調教師も川田騎手も大変だったと思いますし、牧場で関係者たちとも話をしてくれました。川田騎手は涙を流し続けていましたね。」
4月29日にはノーザンホースパーク内、5月3日からは全国の競馬場やウインズ・エクセルで献花台が設置されました。
「こんなにも早く対応していただけるとは思っていませんでした。私も翌週には京都を訪れましたが、本当に多くの方が花を捧げてくれたことに感謝していますが、それでも何かできなかったかと考えていました。」
リバティアイランドの母、ヤンキーローズは今年2月にイクイノックスの牝馬を出産し、現在はキタサンブラックの子を身ごもっています。将来的にはノーザンホースパークにリバティアイランドの墓を設ける計画を立てています。
「これまでは牧場内に墓を設けていましたが、今回は人目にもつく場所に作らなければと考えています。この2、3年、多くのファンの方々がリバティアイランドを応援してくれたと思いますし、献花台を見ながら、リバティの血を引く馬を残せなかったことや、何ができただろうかと、日々考え続けています。」
多くの人に愛されたリバティアイランド、5歳でその生涯を閉じた牝馬。その死はこれからも向き合い続ける課題となるだろう。【桑原幹久】