第75代横綱大の里誕生へ「アドバイスはほとんどない」稀勢の里親方との強い師弟の絆/連載1

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大関大の里(24=二所ノ関)は、横綱豊昇龍(26=立浪)に惜しくも全勝優勝を阻まれた。豊昇龍との過去の対戦成績は、不戦勝を除いて1勝6敗。名古屋場所(7月13日初日、IGアリーナ)での新横綱としての雪辱を誓っている。25日の千秋楽には、日本相撲協会審判部の高田川部長(元関脇安芸乃島)が横綱昇進を諮る臨時理事会を八角理事長(元横綱北勝海)に要請し、承認を得た。26日の横綱審議委員会と28日の番付編成会議、臨時理事会を経て、正式に昇進が決まる日程となっている。日刊スポーツは「大の里 令和の大横綱へ」と題し、全3回の連載を行う。第1回目は師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)との二人三脚の道のりを紹介する。

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待望の日本出身横綱が誕生する。元横綱稀勢の里が2017年初場所後の昇進以来、8年ぶりのことである。師匠自身は幕内優勝が2度と限られたものの、モンゴル勢が全盛の時代に朝青龍や白鵬に果敢に挑み、絶大な人気を誇った存在だ。その師匠が果たせなかった全勝優勝も目前に迫り、28日には正式に「第75代横綱大の里」が誕生する。その成功の背後には、強い師弟の絆があった。

今場所始まる5日前の6月6日、半年ぶりに三番稽古が行われた。結果は大の里の8勝2敗。それまでの師弟の三番稽古は、昨年九州場所前が大の里の7勝5敗、同秋場所前が10勝7敗であり、負け越すことはなかったものの互角に近い成績だった。しかし今回、師匠を初めて圧倒した。師匠は稽古後「もうバッチリだと思う。いい圧力だったし、隙もなかった。だいぶ上向きになったと思う。やっぱり(相撲を)やると1番分かる。大丈夫」と語り、珍しく手放しで賛辞を贈った。

大の里は今月2日の稽古総見では不調で、全て三役以上の相手に挑み、16番で6勝10敗という結果を残した。特に横綱豊昇龍には1勝8敗と大きく負け越したが、横綱昇進に暗雲が立ち込める中、師匠が力を貸してくれた。師匠の“大関卒業試験”に合格し、大の里は「三番稽古や稽古でアドバイスはほとんどない、『感じろ』ということだと思う。少ない分、言葉に重みがある」と語った。

師匠の師匠である元横綱隆の里の先代鳴戸親方(故人)も同様に細かなアドバイスをほとんどしないタイプだった。脈々と受け継がれる横綱の教えにより、二所ノ関親方は「一緒に稽古していても、こちらの意図を理解する能力が高い。理解力の高さが抜群」と明かしている。稽古を通じて課題を見つけ、必死に食らいつく弟子。この日の優勝インタビューで大の里は「親方のことを信じて、やっていけてよかった」と話し、その信頼関係は「令和の大横綱」を予感させる強さへとつながっている。【高田文太】

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