大の里、13日目に優勝を決めれば白鵬以来10年ぶり 初土俵から13場所での横綱昇進なら史上最速

大関の大の里(24歳、二所ノ関部屋)が自身初となる初日からの12連勝を達成し、2場所連続4度目の優勝と横綱昇進に王手をかけました。平幕の伯桜鵬をはたき込みで下し、唯一の2敗で追っていた横綱豊昇龍が敗れたことで、後続との差は3に広がりました。残り3日間、仮に3連敗した場合でも優勝同点以上が確定しました。13日目の大関琴桜戦に勝つと、長らく続いた激戦の時代を終え、大の里が頂点に立つことになります。
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12日目も安定した取り組みを見せました。伯桜鵬に対し、大の里がもろ手突きから頭を下げてくる相手をはたき込みで制しました。冷静に対応し、「落ち着いて取り組めました」と述べ、初対決には「集中して相手をしっかり見ていたので」と淡々とした様子で語りました。12連勝を達成したものの、浮ついた様子は見せませんでした。
横綱豊昇龍の敗北により、後続との差が3に広がりました。「自分のことだけを考えて、明日以降も頑張ります」と語り、13日目に優勝が決まる可能性があるにもかかわらず、「以降」と言及するあたりに隙がありません。12日目終了時点で3差の逆転例はありません。1950年の横綱審議委員会発足後、連続優勝で昇進を見送られた大関はいません。仮に3日間すべて敗れても、優勝同点。横綱審議委員会の推薦内規には「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とあり、大の里は現時点でその条件を満たしています。
このまま優勝すれば、大相撲史にとっても意義深い出来事です。2021年九州場所で照ノ富士が優勝して以来、先場所まで20場所連続で連覇がありません。これは、優勝制度が1909年に確立して以来、2度目の出来事です。最初の例は1974~1978年の「輪湖時代」で、20場所中輪島と北の湖が13場所を制しました。現在は20場所で12人が優勝を経験する乱世にあります。
史上最多45回の優勝を誇る元横綱白鵬の宮城野親方は、「1回目の乱世は両横綱が強かった。今回は、コロナの影響で巡業がなく、力士たちに稽古の蓄積がないのでこういうことが起きた」と分析します。コロナ禍が過ぎ、誰が勝つか分からない時代を、大の里が終わらせる可能性があります。
初土俵から13場所での横綱昇進なら史上最速記録となります。また、負け越しなしでの横綱昇進は過去に例がありません。大関昇進時の「唯一無二」の口上を既に体現しています。13日目で優勝を決めれば、2015年初場所の白鵬以来10年ぶり。13日目、勝てば優勝。「それについては、やるべきことをやっていけばいいので」と大の里。歴史的瞬間が目前に迫っています。【佐々木一郎】