初の綱取りに挑む大関大の里(24=二所ノ関)が、進化を見せて11連勝を果たしました。取組前まで2敗を喫していた小結若隆景に苦戦。初優勝を支えた右差し、2度目の優勝をもたらした左おっつけという、従来の得意技は封じられました。しかし、今場所の前に習得した「第3の武器」、右上手が逆転劇を引き起こし、寄り倒しで無敗を守りました。2敗で追っているのは横綱豊昇龍ただ一人となり、13日目には4度目の優勝を果たし、事実上の横綱昇進が決まる可能性が出てきました。
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今場所の前に身に付けたばかりの「第3の武器」が、大きな勝利を呼び込みました。右を差せず、左もおっつけることができず……。大の里は苦しい体勢に追い込まれました。さらには、相撲巧者の若隆景にもろ差しを許してしまいました。先場所までなら絶体絶命の状況でしたが、肩越しに右上手を引き、幕内最重量191キロの体を生かして44キロ軽い相手に圧力をかけました。相手に下手投げを打たれても、命綱の右上手は放さず、体を預けて寄り倒しました。
「集中して取ることができた。危なかったけど、流れでいけたと思う」。取組前までの対戦成績が2勝2敗という難敵を退け、重圧から解放された様子で語りました。もし負けていれば、豊昇龍、若隆景と1つの差となり、途端に優勝争いは混迷しました。しかし、取組前に2敗だった4人が1人となり、一気に13日目での優勝の可能性が出てきました。
大一番を制した右上手は今月6日、茨城・阿見町の部屋での稽古で手応えをつかんだばかりでした。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と半年ぶりに行った、連続10番の三番稽古。右四つの自身とはけんか四つ、左四つの師匠に、なかなか差し手争いで勝てませんでした。しかし、右差しにこだわらず、右上手を引いて寄り立てる相撲に変更して8勝2敗。それまで師匠との三番稽古は、ほぼ互角の勝敗でしたが、初めて圧倒しました。
その日の稽古後、大の里は「自然と体が動いた。相手の動きを封じ込められるようになった」と、成長を語っていました。きっかけは3度目の優勝を果たした、先場所千秋楽の優勝決定戦の高安戦。「右上手を取って、うまく攻められた。あれがかなり自信になった。1つの発見」。優勝のたびに新たな武器や気付きがあり、大事な綱取り場所で優勝争い独走へとつなげました。
この日の内容は「良くなかった」という。それでも勝たなければならないのが横綱の使命。「集中し直して頑張りたい」と、再び内容も求める決意です。風格も十分。いよいよ4度目の優勝と横綱昇進が、現実味を帯びてきました。【高田文太】