日本相撲協会は、5月15日の夏場所5日目に元小結の北勝富士(32)の現役引退と年寄「大山」襲名を発表しました。今後、八角部屋の部屋付き親方として新たなキャリアを開始し、後進の育成に努めることになります。北勝富士はこの日、八角親方(元横綱北勝海)とともに両国国技館で記者会見を行いました。東十両8枚目だった3月の春場所では3勝にとどまり、今場所は約9年ぶりに幕下に降格。首や右膝の痛みもあり、初日から休場していましたが、今場所中に引退を決断しました。約10年間の現役生活について、北勝富士は「10年、そして10歳から始めた相撲を約23年間、一生懸命取り組んできました。悔しい思いもしましたが、充実した相撲人生でした」「1日1番に全力を尽くし、それで全てが終わってもいいという覚悟で取り組みました。最後まで貫けたことが自分の誇りです」と振り返りました。北勝富士は新入幕時に、本名の大輝から「北勝富士」に改名。師匠の「北勝海」から「北勝」、師匠の師匠の「北の富士」から「富士」をもらったといいます。その名前について「師匠から、この名前を良くするのは自分次第と言われて、とても意識するようになりました」。北の富士さんは昨年11月に亡くなりましたが、北勝富士は「多くの励ましをいただき、『まだこれからだぞ』と言われ続けたことが心に残っています。これからもさらに努力を重ねていきたい」とコメントしました。印象的な取組としては、横綱白鵬を下した試合と学生時代のライバル、御嶽海との対戦を挙げました。2018年初場所での白鵬戦では、3度目の対戦で初めて勝利し、金星を挙げました。「子どもの頃から最強の人と対戦したいと思っていたので、実際に土俵で勝てたことは自分にとって大きな財産です」と振り返りました。御嶽海とは28回の対戦があり、成績は12勝16敗。「同期の御嶽海関との熱い戦いは自分の成長を感じさせてくれるものでした」と語り、引退決断後には御嶽海から「お前のおかげで切磋琢磨できた」との感謝の言葉がありました。八角親方は「全てやりきったと思います。リハビリも含め、本当によく頑張りました」と労い、「怪我を乗り越えた経験が、今後の親方としての活動に生かされるでしょう」と期待を寄せました。【佐々木一郎】◆北勝富士大輝(ほくとふじ・だいき)本名・中村大輝。1992年(平成4年)7月15日生まれ、埼玉県所沢市出身。10歳から相撲を始め、埼玉栄高校で高校横綱、日本体育大学では学生横綱を獲得。2015年春場所で初土俵、2016年名古屋場所で新十両、同年九州場所で新入幕。2017年名古屋場所から4場所連続で金星を獲得。23年名古屋場所では12勝を挙げ、優勝決定戦に進出し、豊昇龍に敗れました。最高位は小結で、三賞は殊勲賞1回、技能賞2回。金星は現役最多タイの7個。通算成績は424勝368敗37休。