夢と期待が込められた印象的なホームランが生まれた。ソフトバンクからのトレードで巨人に加入したリチャード内野手(25)は、移籍後すぐに「7番三塁」でスタメン出場。3点を追う5回には、広島の先発投手・森から3年ぶりのホームランとなる今季1号ソロを放ち、続く6回には1死一、二塁から左前打を記録。その後、延長10回の四球後に代走を送り出されたものの、初試合で4打数2安打1打点、1四球。試合前には入団会見を終え、期待の“ロマン砲”が新たな舞台で輝きを放った。試合は延長12回、4-5でサヨナラ負けし、順位は3位に下がった。
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その打球は空高く舞い上がり観客のロマンを掻き立てた。リチャードは広島の夜空へと向け、壮大なアーチを描いた。3点を追いかける5回の先頭で打席に入り、広島森の143キロ直球を豪快に打ち返した。両手で振り上げたツートンカラーのバットは天を指し、新しいユニホームを纏った彼の123キロの体はダイヤモンドを軽やかに1周した。
その姿を鏡の前で見つめ、彼は薄く微笑んだ。12日に突然発表されたトレードで、最低限の野球道具を携え合流したリチャードは、出発前にユニホームを着替え、「鏡を見た時、自分にも威圧感が漂っているかも」と思った。胸に刻まれた「TOKYO」は新たな地を象徴する。試合前練習の直前に行われた入団会見では、緊張が見て取れ、「何が起きてるか正直分かりません」と不安を洩らした。
落ち着く暇もなく“初戦”に挑んだ。2回2死一塁の打席で初打席を迎えたリチャードは、外角のチェンジアップに空振り三振を喫した。「以前ならば、初打席での三振を引きずっていたが、チームメートからの『切り替えて』という声が心に響き、フレッシュな気持ちで次の打席に立つことができました」。新しい仲間たちの助言が心に残り、1号ソロにつながった。
新天地の巨人で再会した甲斐が後輩のホームランを見守り、喜んでいた。即スタメンに抜擢した阿部監督もリチャードを拍手で迎えた。主砲・岡本の長期離脱、ベテラン・坂本の調子の低迷、丸の開幕からの不在など、チームの状況は厳しい。
リチャードには救世主としての大きな期待が寄せられている。「自分自身も継続できずに苦しむ時があるが、今日何が良かったかを振り返ることで、毎日同じことができるように準備し、結果を出す以外のことにも目を向けていきたい」と語った。今後の成長が期待される彼の未来には、希望があふれている。【為田聡史】