WBA世界スーパーフライ級6位の井岡一翔(36歳=志成)は、約10カ月ぶりの「因縁マッチ」で敗北し、王座を取り戻すことができませんでした。昨年7月の初対決で判定負けを喫した無敗の同級王者フェルナンド・マルティネス(33歳=アルゼンチン)との再戦に挑み、0-3の判定で敗北。試合中、10回に左フックでダウンを奪ったものの、ジャッジ3人からの支持を得られず苦しい敗戦となりました。自身初の世界戦連敗となり、4度目の再戦で初黒星となったが、それでも井岡は現役続行を明言しました。 ◇ ◇ ◇ 悔しさを抱えながらも井岡は淡々としていました。昨年7月のマルティネス戦後には涙を流しましたが、今回はリング上から後援者やファンの悲しい表情を見て、ほんの少し涙を流しただけ。「泣くほどではなく、やり切ったと満足している。今日は全力を出して戦い抜いた」と振り返りました。12回の死闘を戦い抜き、一定の満足感があったようです。 彼は執念のパンチを見せました。10回に左フックでマルティネスの顎をとらえ、ダウンを奪いました。「一つ一つ、全身を使って戦いました。かなり熱くなり、自分を冷静に見ることができなかった」。しかし、ジャッジ3人は無敗の王者を支持し、連敗を喫する結果となり「結果は全てです。負けたことは素直に悔しい。一進一退の攻防の中で倒したい気持ちが先行してしまった」と反省しました。 再戦は昨年の大みそかに一度決まりましたが、王者のインフルエンザ感染により試合前日に中止されました。今年3月に再戦が改めて発表される間、マルティネスがWBC王者ジェシー・ロドリゲスとの統一戦交渉を進めているという海外報道もあり、試合決定までの葛藤があった因縁マッチでした。3度目の対決の可能性については「僕たちの思いだけでは実現できない」と述べました。 元3階級制覇王者・長谷川穂積の国内最年長の世界王座奪取記録(35歳9カ月)も更新できませんでしたが、井岡は36歳1カ月で「もう引退したいという気持ちはない」と明言しました。スーパーフライ級で再び世界王座を狙うのか、それとも日本男子初の5階級制覇を目指しバンタム級に挑戦するのかは未定ですが、井岡は「どの階級で戦っていくか、まだ考えていない。落ち着いてから考えたい」とした上で、現役で戦い続ける意志を示しました。【藤中栄二】 ◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平成元年)3月24日生まれ、大阪府堺市出身。興国高校で史上3人目の高校6冠を達成後、東農大を中退し、2009年にプロデビュー。2011年にWBC世界ミニマム級王座を日本最速の7戦目で獲得。2012年にWBA世界ライトフライ級、2015年にWBA世界フライ級王座を史上最速の18戦目で獲得しました。2017年に一度引退したが2018年に復帰。2019年6月に再挑戦しWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、日本初の4階級制覇を達成しました。2023年2月にWBO世界同級王座を返上し、同6月にはWBA世界同級王座を獲得。身長163センチの右ボクサーファイター。家族には妻と2人の息子がいます。