スタンフォード大・佐々木麟太郎「はいつくばって上がっていく」リーグ戦開幕2カ月、成人の誓いも

高校通算140本塁打をマークした米スタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(20=花巻東)が、全米大学体育協会(NCAA)ディビジョン1のアトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)で奮闘する。リーグ戦開幕から約2カ月が経過。全37試合に出場し、147打数40安打で打率2割7分2厘、5本塁打、31打点をマークする。異国の地で挑戦を続ける「麟太郎の今」に迫った。【取材・構成=久保賢吾】 ◇ ◇ ◇ 「Rintaro Sasaki」とコールされると、浜田省吾の「J.BOY」が球場に流れた。スタンドで観戦する大人、少年までもが「ジェイボーイ」と歌詞を口ずさむ中、佐々木は打席に向かう。「リンタロー」と声援が飛び、周囲から愛される様子がうかがえる。プロリーグのような雰囲気の中、試合に臨む。「勉強の面でもすごくいい環境ですし、こういう環境で野球も学業も両方できてるってことは、すごく誇りを持っていますし、毎日本当に楽しいです」異国の地で苦労や困難もあるが、言葉からは充実した日々が伝わる。18日のノートルダム大戦では午前中に授業を受け、午後から球場に移動。トレーニングに取り組み、午後6時5分開始の試合に出場した。翌19日は午後2時5分開始の試合に向け、午前8時に起床。ウエートトレーニングに励んだ後、試合を迎えた。「授業があって、練習があって、トレーニング、ミーティングなどもあって、スケジュールは毎日パンパンですし、すごくハードな1日を送ってるなと思いますけど、すごくいい経験になってるなと思います」佐々木に話を聞いたノートルダム大との3連戦は、2戦目まで自身は無安打でチームも連敗。約1カ月本塁打から遠ざかり、チームも苦戦が続く中、苦悩、悔しさをにじませながらも、歯を食いしばり、前を向く姿に強さを感じた。「チームも自分自身も今、状況的にはすごくつらいですけど、何とかはいつくばって、上がっていければなっていうふうには毎日信じてやっています」
その言葉を体現するように、第3戦の試合前練習では指導を受けながら、打撃フォームの修正に着手。試行錯誤する中で「自分の軸で打つことを意識した」と足を上げたり、すり足も交えながらバットを振り込み、16試合ぶりの5号2ランへと結びつけた。「今、貫いてることはとにかく引き下がらないことです。例えば、最初は英語が話せなかったですけど、これだけはしないと思ったのは、しゃべれないからしゃべらないってことは絶対にやめようと。しゃべるからアウトプットして、上達していく。野球も苦しい時もありますけど、あきらめないことは自分自身が成長する中で一番大事なことだと思っています」投手は優に150キロを超え、全米、世界から猛者が集まるハイレベルなリーグで日々、勝負する。高校通算140本塁打を放った大砲は打点に重きを置き、チームの勝利に貢献する打者を追い求める。「点数が取れるバッターは一番価値があると思っていますし、ホームランでも長打でも、チームの勝利のためにどれだけ打点をもたらせるか。そこは大事にしていますし、1試合1試合、質の高い打撃ができるようになっていければ」18日には20歳の誕生日を迎えた。1位指名が有力視された高卒でのプロ入り、日本の大学、社会人でもなく、オンリーワンの道を突き進む中、胸に抱く「成人の誓い」を言葉にした。
「野球選手として、自分のプレーとか、人としての姿勢などを通じて、他人に影響を与える、人を幸せにできるような人間になりたいなっていうふうには今、思っています」20日の試合後には、多くの子どもたちから囲まれた。次々と笑顔で写真に納まる姿は、自らの決意を体現するようだった。◆米国の大学野球 全米大学体育協会(NCAA)のディビジョン1(1部)だけで約300チームが所属。大まかな地域ごとに20以上のリーグがあり、各大学は年間60~75試合の公式戦を行う。上位8チームが6月にオマハで開かれる「カレッジワールドシリーズ」に出場。米国では高校野球より人気があり、昨年の同シリーズの入場者数は過去最多の1試合平均2万4788人を記録した。最多優勝は南カリフォルニア大の12度。MLBのドラフトには4年制大学では3年生を修了、または21歳になった時点で指名対象となり、今月18日に20歳を迎えた佐々木は来年のドラフトで対象になる。◆スタンフォード大 米サンフランシスコの約50キロ南東にある私立大学で、ハーバード大と並ぶ最難関の大学とされる。80人以上のノーベル賞受賞者を輩出。スクールカラーは緋色(ひいろ)と白。