```html 日刊スポーツの特集「虎を深掘り。」第25年第10回では、阪神タイガースの湯浅京己投手(25)を支える特別なシューズに注目しました。彼は国指定の難病「胸椎黄色靱帯(じんたい)骨化症」から復帰を果たした今シーズンにおいて、神経伝達を意識したリハビリの一環としてクッションのない特殊なランニングシューズを使用してきました。4月下旬に1軍に復帰し、これまでに21試合に登板。この秘密兵器の詳細を探ります。【取材・構成=波部俊之介】 ◇ ◇ ◇ 湯浅の足元を支える特殊な「シューズ」が、彼のリハビリの要となっています。走り込みやトレーニングを通じて、段階的に進めてきたリハビリの中で、彼が手術後から愛用しているのがこのランニングシューズです。 「ただ履いて歩くだけでトレーニングになる。右足の感覚がなかったからこそ、フラットなシューズを履いて1からやり直そうと思いました」 湯浅が使用しているシューズは、株式会社ケンコー社のゼロシューズで、内部にクッション材料が全くなく、地面との接触を直接感じることができるものです。湯浅は、この薄型のシューズを「はだしに近い感覚」と表現しています。トレーニングの際にも愛用しており、今後も使い続ける予定です。 彼が患った「胸椎黄色靱帯(じんたい)骨化症」は、骨化した黄色靱帯が脊髄を圧迫し、下半身のしびれや脱力感を引き起こす国が指定した難病です。湯浅自身、右足の感覚が消えるような症状がありました。リハビリ期間中は、全身の神経伝達を意識したトレーニングに取り組み、神経伝達を促進することで動きの精度を高める努力をしました。 湯浅自身がメニューを考案し、時には手指を使うボルダリングにも挑戦しました。ゼロシューズは、この目的に対して最適なアイテムといえるものでした。 「足裏の機能を高めたい。右足のしびれがあるからこそ、足元を見直そうと試行錯誤しました」 足裏は、多くの末梢神経が集中している体の部分で、姿勢や足の着地状況を脳に伝える「センサー」の役割を持っています。しかし、多くの靴にはクッション材が使われており、地面からの「情報」が足裏にダイレクトに伝わりにくくなっています。これにより、時には無理な体勢で姿勢を維持しようとすることがあり、怪我につながることもあります。 一方、ゼロシューズは足裏の機能を重視した製品です。この商品を担当する面川聡さん(47)は「足裏の機能が高まると、バランスを崩さなくなるための情報が脳から体に伝わりやすくなり、無理に身体を支える必要がなくなります。ケガを防ぐとともに、バランスを崩す前に身体を補正できるシューズです」と説明しています。 湯浅が目指していた神経伝達の促進を足裏から高められるシューズです。彼の元同僚である日本ハムの斎藤から紹介を受け、数種類を試しながら使用を開始しました。これを履くことで神経を刺激することができるため、一石二鳥の商品となりました。 「わずかな凹凸も感じ取りやすい。裸足で走っているような感覚です。様々な感覚を取り入れることで神経も刺激されます」 4月下旬に一軍へ合流してから今シーズンはすでに21試合に登板し、防御率1.93を記録。2軍でのリフレッシュ期間を経た今月25日に再び1軍に合流しました。リハビリ期間中から抱き続けた向上心が根底にあります。「元に戻すのではなく、さらに良くなるように何ができるかを考えてきた」。この思いと共に、高みを目指して腕を振ります。 ```